1988年、映画史に新たな伝説を刻んだ作品がある。その名は「ラストエンペラー」。清朝最後の皇帝、溥儀(プーイー)の波乱万丈な生涯を描き、壮大なスケールと人間ドラマが織りなす歴史の叙事詩として、世界中で高い評価を得た。
本作は、1987年に公開され、第60回アカデミー賞で9部門にノミネート、うち最優秀監督賞、作曲賞、衣装デザイン賞を受賞した。その栄光は、単なる映画の成功を超えた、歴史と文化に対する深い理解と敬意が感じられる作品であることを物語っている。
物語の舞台は中国最後の王朝、清朝。 3歳の溥儀が「皇帝」の座に就き、紫禁城で華やかな日々を送る様子が描かれる。しかし、時代は大きく変わりつつあり、中華民国の建国と共に、溥儀は皇帝の座を追われることになる。その後、彼は満州国の皇帝として擁立されるも、第二次世界大戦終結とともに再び囚われの身となる。
「ラストエンペラー」は、溥儀という一人の男の人生を通して、中国近代史の激動を描き出している。幼い頃から権力と privilege に囲まれて育った溥儀だが、彼は政治的思惑に翻弄され、自由を奪われてしまう。そして、終戦後には戦争犯罪人として裁かれ、シベリアの収容所に送られることになる。
この作品は、単なる歴史ドラマではなく、人間の複雑な心理を描き出すことに成功している。溥儀は、権力と愛情、自由と責任といった相反する感情に葛藤しながらも、自身の運命を受け入れることで成長していく姿が描かれている。
監督のベルナルド・ベルトルッチは、溥儀の人生を忠実に再現するために、膨大な資料調査を行い、当時の中国を再現するための緻密なセットデザインと衣装を考案した。 特に、紫禁城の壮麗な内部装飾や、満州国の宮殿など、時代背景が鮮明に描写されている点は高く評価された。
役名 | 俳優 |
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溥儀(幼少期) | 劉青雲 |
溥儀(青年期) | 張国栄 |
溥儀(壮年期) | John Lone |
王号淑 | 陳紅 |
文熙 | 梁朝偉 |
「ラストエンペラー」は、国際的なキャストとスタッフが参加し、中国語、英語、満州語など複数の言語を使用している点が特徴である。特に、溥儀を演じたジョン・ローンは、その精緻な演技で高い評価を得た。彼の堂々たる風貌と、悲しみや葛藤を抱えた複雑な内面を表現する演技は、まさに圧巻と言えるだろう。
この作品の魅力は、歴史的な出来事だけでなく、人間の感情を描写することに重点が置かれている点にもある。 溥儀の妻である王号淑との恋愛模様や、家族との葛藤、そして自由を求める心の葛藤など、様々な人間ドラマが描かれている。
「ラストエンペラー」は、単なる歴史映画ではなく、人生の苦悩や愛、そして希望を描いた普遍的なテーマを扱っている点で、現代においても多くの観客に響く作品と言えるだろう。
最後に、この映画を観る前に、中国近代史について少し調べてみることをおすすめする。 歴史背景を理解することで、映画をより深く楽しむことができるだろう。